沢月亭日記 |
2002年12月1日(日) 休日出勤 |
朝、職場から電話。 出勤の依頼。しかも国語の面談。 登録は英語と国語の講師ということになっているものの、東京に来てから英語しか割り振られたことがない。電話やFAX、添削では国語もやっているものの、一対一の面談となると……できるのか? とはいえ当日に電話してくるということは、それだけ人が見つからないということだ。 かなり断りにくい。 そういうわけで、5時間連続で国語を担当する。 古文はまあ、元の文を読みつつ解説していけばいいのだが、現代文を解説してくれという質問に一苦労。 こんなにわかりやすくはっきりと書いてある文章の、どこが一体わからないのだろう、と。 文章中の対比関係を示して流れを説明するが、まだ納得していない様子。 前提となっている日本文化についての認識を説明して、やっと納得がいったようだった。うう、やっぱり難しいかも…国語。 今日の晩ごはん。 筑前煮(連れ作)、和風ポトフ、春菊のお浸し、銀杏、わかめと麩のみそ汁。 |
2002年12月5日(木) 2枚の回数券 |
職場で往復の新幹線回数券をもらい、それを使って高崎へ行く。 仕事を済ませ、帰ろうとして自動改札に帰りの回数券を通す。 「このきっぷでは乗車できません」と表示され、足止めをくらう。 嫌な予感がするが、とにかく駅員さんに回数券を見せた。 「このきっぷで入ってますね。3時ごろに新宿で入場した記録があります」 愕然とした。 つまり、 ・新宿で回数券Aを通し、JR構内に入った。 ・東京駅でもう一枚の回数券Bを使って新幹線に乗車。 ・回数券B、高崎にて回収。 ということだったらしい。 回数券Bが発見できればなんとかなったようなのだが、時間が経過しているためにこの回数券Aは使用不能になってしまったわけだ。 従って、自腹で帰らねばならない。 ううう、なんでこんな初歩的なコケを……。 鈍行で帰り着いてから晩ごはん。 鶏肉と青梗菜のミルク煮、ポテトサラダ(連れ作)、かぼちゃのホクホク煮(連れ作)、もやしのごまあえ、豆腐とわかめのみそ汁。 |
2002年12月6日(金) そう聞かれても。 |
電話質問に答えていた時のこと。 「布、ってどう書くんですか?」 あの、それを電話で説明するのはひどく難しいんだが…。 「カタカナの『ナ』を書いて、その右下に…」などと言っていたら、なんとか思い出してくれたようなのだが。 久しぶりに授業。ブランクがあるとすぐ授業のやり方を忘れることを痛感する。声だけはよどみなく、でも、思い返すと結構わけのわからないことを言ってしまった。 今日の晩ごはん。 小かぶと鶏だんごの含め煮、もやしの梅肉あえ、ポテトサラダ(連れ作)、ピーマンと青梗菜の炒め物、豆腐と油揚げと焼き葱のみそ汁。 |
2002年12月7日(土) 直撃! |
寒いので、夕食は鶏の水炊きにしようということになった。 雨の中を買い物に行き、下ごしらえにかかる。 鶏を煮ている間に、もみじおろしを作ろうと思い立った。 もみじおろしは、水につけておいた唐辛子を、菜箸で穴をあけた大根に差し込み、その大根をすりおろして作る。 大根に唐辛子を詰め込んでいたら、唐辛子が2つに割れてしまったので、大根にもう一つ穴をあけようとした。 唐辛子を詰め込むのに使っていた菜箸を、大根に突き刺す。 大根から飛びはねた汁が、私の左目を直撃した。 重ねて言うが、唐辛子をぐりぐりと詰め込んでいた箸である。 しかもこの唐辛子、かなり辛い。 少しでも目を開けると痛い。左目を押さえたまま、何をどうしていいのかわからずに、しばらくキッチンをうろうろと歩き回った。 なんとか洗面台にぬるま湯(水だと今日は寒い)を張り、洗い流したが、これを書いている今でも、まだ目が赤い。 今日の晩ごはん。 鶏の水炊き、がんもどきの含め煮。締めはうどんで。 |
2002年12月9日(月) 雪だし寒いし風邪だし |
寝込んでしまった。 この風邪っぽい症状が喉に居着くのだけは避けねば。声が資本なんだから。 今悩んでいるのは、来年非常勤で学生に読ませる本。 振り返ってみると「その教官が訳している最中の文献/当時関心を持っていた文献」を英語とかドイツ語とかの文献として読まされていたような気がする。 授業で読んでいたものが翻訳されていたのを見かけたら、訳者が教官だった、とか。 そういう選び方でいいんだろうか。 なんか…学生を踏み台にしているような気が。 どっちかというと、ある程度学生のレベルに合わせたいのだが…こーいうのはやはり、受験産業で働き過ぎた「弊害」なのかなあ。 うーむ。 今日の晩ごはん。 和風チキンピカタ、自家製ラディッシュとレタスのサラダ、キャベツとジャガイモのみそ汁、レンコンのきんぴら、がんもどき(と人参)の含め煮、かぶと鶏だんごの含め煮。 |
2002年12月11日(水) 久しぶりに… |
朝っぱらからもうだめだ系の鬱状態。 なんだろう。来年の文献決めるのに迷ってるせいか? 久しぶりの、わけのわからない焦燥感にかられつつ仕事を進める。 こんな時は、言葉の一つ一つが攻撃力を持ってくる。一昨日の受付終了時間10分前のタイムスタンプ(なお、昨日は定休日だった)のお客のFAX質問に「明日の授業で使うので今日中にお願いします!」と書いてあるのにすら、自分が責められているような気になってダメージを受けてしまう。特に、「!」のあたりに。でもって、思わず「期日に間に合わず、申し訳ありませんでした」とか詫びてしまったり。いや、どう考えても少なくとも私のせいではないのだが、そんなことすら自分のせいのように感じてしまう状態だった、ってこと。 少しマシになってきた頃、出張に出かける。 東北新幹線に「はやて」が登場した今回のダイヤ改正で、上越新幹線に「とき」が復活した。今までは「あさひ」に乗って高崎まで出かけていたので、なんだか違和感がある。 帰宅したら、連れが焼豚を作ってくれていた。昨日肉を買って、頼んでおいたのだ。 材料をそろえてリクエストすると作ってくれる、そんな品数が少しずつ増えてきていて嬉しいことである。 昨日の晩ごはん。 椎茸のひき肉詰め、ブロッコリーの葱ソースかけ、レタスのスープ、大根ときゅうりの梅床漬け、…あともう一品あったような気がするが…。 今日の晩ごはん。 焼豚(連れ作)自家製レタス添え、レンコンのサラダ、もやしとピーマンの炒め物、豆腐と椎茸のみそ汁、ブロッコリーの葱ソースかけ。 |
2002年12月12日(木) はたらいた |
派遣はなく、ちょっと暖房が効き過ぎた代々木で仕事していた。 英語、国語、小論文、日本史、数学、それに校正。 質問件数が少ない時期になり、普段担当している科目の質問がなくなって、他の科目のできそうな質問に手を伸ばした。その結果あれやこれやとやっていたわけだけれど、かといって「あの講師は日本史や数学もできるらしい」と思われると予想もしない時に質問を振られるので要注意である。 今日困ったこと:「梁塵秘抄」(平安時代末期の歌謡集)の「梁」の字を電話で説明できなかった。「梁(はり)」と言っても伝わらない。字の形を説明してもなんか違う。結局、教科書で「今様」「後白河法皇」を手がかりに調べるように指示して見つけてもらった…。 今日の晩ごはん。 鶏肉のコーンクリーム煮、ポテトサラダ(連れ作)、ブロッコリーのゆでた奴、刻みオクラ、もやしとわかめのすまし汁。 |
2002年12月17日(火) 年内の授業、終了。 |
今日は結構思ったように進められた気がする。 しかし、本を読む速度、自分を基準に考えちゃいかんのがわかった。 今日の晩ごはん。 ひき肉とじゃがいものレンジ煮、ブロッコリーの辛子醤油あえ、大根と梅漬け人参と貝割のサラダ、いり豆腐、豆腐と椎茸のスープ。 |
2002年12月23日(月) クリスマスの晩餐 |
叔母の家で、両親と叔母、従姉、連れと夕食。 以下、印象的だった料理を列挙。 海老がぎっしりと詰まった隙間にニラが入っている揚げ春巻。海老の密度が感動的である。 白身魚の刺身サラダ。炒めたナッツと揚げた餃子の皮の食感にはまる。 1センチ程の厚さの大根の上に焼いたフォアグラをのせたもの。フォアグラのしつこさが大根で消えているのにびっくり。 ローストチキン(丸鶏)。ハムやソーセージが絶品の店で注文したとか。腿の部分を渡されたので、解体して連れと分ける。中まで味がしみているのがすごい。 デザート。三越で予約したという、ピエール・エルメのクリスマスケーキがひたすらすごかった。とても甘いクリームとさっぱりして冷たい生地が絶妙なバランスを取っている。その後で食べた帝国ホテルのガトーショコラがかすみまくって(いや、これはこれで十分おいしいのだが)いた。 途中、叔母宅にいつも来る野良猫がやってきた。叔母と従姉が上質の餌をやるので、すっかり巡回ルートになっているらしい。話には聞いていたし、写真も見ていたのだが、実際に見るとかなりの美人猫。キジトラなのだが、桃色の鼻と真っ白な口元、夜のためか見知らぬ人間が大勢いるせいか、少し開き加減な瞳孔。ポーチに座ってこちらを見上げる仕草が、かなりかわいい。喜んだ父が思わず立ち上がったせいで逃げて行ってしまったのが、ちょっとくやしい。 食後、叔母の旅行写真を見せてもらう。スイスの山なみや、ヨルダンの遺跡の広大さにびっくり。ペトラって、そんなに広いんだ…。 |
2002年12月28日(土) 仕事納め |
職場の仕事納めの日。この日は電話や面談はなく、残ったFAX質問だけを黙々とこなす日。なぜだか人が一杯で、予備の別室で国語だの英語だのに答えていく。 どうやら年越しそばがふるまわれているらしいのだが、別室には来ない。まあいいかとそのまま仕事をしていたら、そばを食いっぱぐれた講師が集められ、そば屋へつれて行かれた。部長がおごってくれたのだ。別室でよかった…。 6時で年内の仕事は終了。そのまま恒例の某オフへ。今回はおでんとじゃこめしが美味しかった。 |
2002年12月30日(月) 大掃除 |
……は、苦手。 ただ、いいかげん窓ガラスが汚れているので、なんとかしなければとは思う。 だもんで、連れが持っていたスチームクリーナーを持ち出してみた。 蒸気であらゆる汚れを落とすという、あれ。 結論からいうと、拭いた方が早かった。 全体にまんべんなくスチームの噴射を吹き付ける労力は、予想以上にかかるものだった。補助ブラシを使っても、細かく噴射し続けても、輪ジミみたいになった雨の跡も消せない。サッシの泥汚れを流すには非常に役に立ったのだが。 だがしかし、網戸さえも単にじょうろの水をかけるだけで結構汚れが落ちるとは。 結局、半端なふき掃除をして終了。 ピカピカで新年は迎えられないが、まあ、そもそも物が多いし。 あ、思い出したように。 今日の晩ごはん。 チキンマカロニグラタン、わかめと鶏肉と長葱の中華風スープ、温野菜の葱ソースかけ、貝割の炒め物(これはちょっと失敗。貝割をごま油と塩、こしょうでいためたら、苦みが増した)。 |
2002年12月31日(火) 安定、というか |
今日はのんびりとおせち料理を作る。 今回のラインナップ:筑前煮(連れ作)、たたきごぼう、酢ばす、ふくさ卵、和風ミートローフ、かまぼこ、みかんゼリー。 実家から去年までは数の子や黒豆をもらっていたのだが、今回は全部自前だったので、ほとんど普段のおかずとかわらない感じになっている。きんとんやごまめぐらいすればよかったか? 連れの実家からかまぼこを送っていただいたのだが、賞味期限がすべて年内だったので、おせちには使えず、毎晩のつまみへと変じる。もったいないような。 雑煮は鶏だしのおすまし、かまぼこと鶏肉、絹さやと菜花(本来は小松菜なのだが、なぜか今年の小松菜はべらぼうに高いので代用)、あとゆずの皮で香り付け。餅は角切りで焼く。予定だが。 今年は比較的安定した年だったかも知れない。そう激しく落ち込むこともなかった(少なかった、かも)。ただその分、新しいことができていない。なんというか「ダメ人間」としての「安定」。日常を楽しむ、と言い換えればなんかよさげなイメージになるけれど、それはまあ、言い換えでしかないから。 あまり負担にならないルーティンワークに流され、新しいことに挑戦していくことができない…それはかつて、会社員時代にも感じたことだ。あの時「このままでは自分はダメになる」と、会社を辞めて院を受けた。 その結果、ダメになった。…ってだめじゃん。 あの時の選択があらゆる意味で間違いだったのは自覚しているのだが、それを立て直すほどの力が、自分には残っていない。 大学の図書館で本を読む、洋雑誌をチェックする。そんな楽しさと、「立て直す」ためのエネルギーが、今ひとつ結びつかない。 このままダメな方向で安定していた方がマシじゃないかとさえ思える。 安定への誘惑は強い。思いつきのメモを研究計画書にまとめようとした時の動悸が半端じゃなく激しくなるぐらいに。泣きたくなるほど苦しくなるぐらいに。 それは、無駄に持ち続けていたプライドなのか。 それとも再生への手がかりなのか。 捨てるべきか、受け止めるべきか、まだ…わからない。 「人畜無害な身辺雑記」にふさわしくないことを書き散らしてしまったかも。 ともあれ、なんとか来年も生きていくです。 すみませんが、よろしくです。 |