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単位としての東京ドーム


 電車の中で見かけた広告に「東京ドームのグラウンドの約2.3倍」てな表現がありました。大塚家具の有明ショールームの広さのことなんですが、ふと疑問。
  体積や容積について「東京ドーム何杯分」というのは時々聞くんですが「東京ドームのグラウンド」で広さを表現するものなのでしょうか

 調べてみると、ないわけではないようです。たとえば東北農業試験場図書館のサイトのここなんかは取材でよく聞かれる質問を受けて、ヒマワリ畑の面積を東京ドーム(のグラウンド)に換算してます。が、「でも、これでイメージわきますか?」と最後に。
  私もあんまりわきません。
 なんというか、なぜ東京ドーム?という疑問がつきまとってきます。

 単位をこうやってなにかにたとえて換算してみるというのは、たぶん正確な量よりはむしろ「これだけ広いんだ!」「これだけ多いんだ!」みたいなインパクトをねらったものなのでしょうが、これには「身近でわかりやすいものをたくさん使ってあらわす(畳40000枚とか)」ものと「イメージとして広そうなものを使う」ものとがあって、東京ドームは後者なんじゃないかという気がします。ならばピンと来ないというのは単に、東京ドームに誰もが「おおお、広いぃぃぃッ!」というイメージを持っているとは限らない、ということになるのかも知れません。

 あまりにでかすぎたり身近でなかったりすると「おおお、でかいッ!」とすら思えなくなってしまうんで、「でかい感」にはある種の適切さが必要なんじゃないかと思ったりもします。

 たぶん、霞ヶ関ビルが体積や容積に用いられたのは、日本初の超高層ビルを当時の人々が「おおお、でかいッ!」と思いやすかったからなのでしょう。もっとでかいものが増えてインパクトが薄れた時、驚かせ単位(なんだそれは)としての霞ヶ関ビルの役割は終わったのかも。

 とりあえず、ここまでいろんな換算を並べられると(NTT東日本青森支店が青森県の日本一を紹介したページ)よくわからんがなんかすごそうというのだけは伝わります。欲を言うなら「延べ1370万人」も「青森県の人口の約9倍」みたいにしてほしかったなあ。

 


 で、せっかくなので一緒に出てきた幾つかの疑問も調べてみましょう。

 まず、そもそも、東京ドームのグラウンドってどのぐらいの広さなのでしょうか?
  まあ、グラウンドの面積ぐらい東京ドームのサイトに行けばあるでしょう。というわけで探すと、あっさり見つかりました。しかもFAQに載ってます。

引用ここから------------------

Q よく東京ドーム何個分や何杯分という表現を耳にしますが、東京ドームの面積や容積をおしえて下さい。
A 面積は、46,755平方メートル(建築面積、ちなみにグラウンドのみの面積は13,000平方メートル)です。容積は、124万立方メートルです。

------------------ 引用ここまで

 ということのようです。大塚家具の有明ショールームは30000平方メートル。13000で割るとたしかに約2.3ですな。東京ドームの建築面積ではなく、グラウンドの面積。
  「東京ドームの面積」か「東京ドームのグラウンドの面積」かは、使う人によってまちまちのようです。たとえば前述のヒマワリ畑はグラウンドの面積でしたし、この記事なんかは日本の土地面積の増えた分を「東京ドームの面積」で数えているようです。

 

 しかし、次の疑問。
 「東京ドームの面積」はなんとなく広そうだなあということがわかりますが、野球やるグラウンドだったら、別に東京ドームでなくても「グラウンドの面積」は大して変わらないのではないでしょうか。
 ていうか、所詮野球やるのに信じられないほどの広さは必要ないわけだから「おおお、広いッ!」というイメージは「グラウンド」からは喚起されないんじゃ?
 あるいは、東京だから「東京ドームのグラウンド」と言ってるけれど、たとえば千葉の人に向けてなら千葉マリンスタジアムのグラウンドいくつ分とか、福岡の人には福岡ドームのグラウンドいくつ分とか、ご当地用にさしかえた方がイメージがわいたりして。

 ちなみに体積・容積の単位として、秋田県では「秋田県庁〜杯分」という表現を用いる と、秋田弁に関するエッセイの充実した「Σ-Section」に書いてありました。
 また逆に、東京ドームができたことで面積と容積に関する換算基準が統一されたという見方もあります。つまり面積も容積も同じものを基準にできるようになったわけなんだけれど、それってかえってややこしい気が…。


 とはいえ「この球場は広い」なんて表現を聞いたこともあるので、球場ごとにばらつきはあるのでしょう。 まあ「グラウンドの面積」と「野球する時に使う部分の大きさ(両翼の長さとか)」は違うのでしょうが、ここではあくまで「面積」として数値になっているものを扱うことにしましょう。だから、野球ファンには「小さい球場」と認識されていても面積は結構広いということもあるかも。

 てなわけで、わりとすぐに集められるものだけ集めてみました。
 ちなみに「Days Like This」の「野球場へ行こう!」に九州を中心とした球場の面積のデータがありますが、 建築面積かグラウンド面積かの区別がないので(いや、大体わかるけど…)参考までに。

球場名
建築面積
グラウンド
(アリーナ)
面積
大阪ドーム
33800
13200
千葉マリンスタジアム
*35373
15018
**14674
ナゴヤドーム
48169
13400
阪神甲子園球場
39600
14700
広島市民球場
23848
12160
札幌ドーム***
53800
14500

単位:平方メートル
*全体投影面積(グラウンド含む)
** 野球時
***まだオープンしてないけど

  いくつかのサイトでは「平方メートル」の単位記号が機種依存文字なのか「?」に読めました。「面積13000?」って、なんか自信なさそげ。

 というわけで大塚家具の日本一の広さを誇る有明ショールームは、広島市民球場のグラウンドなら約2.5個も入るのに対して、甲子園球場なら約2個しか入らないことになりますね。グラウンドではなく建築面積で考えると、東京ドームまるごとは入らないけど、広島市民球場なら大丈夫、ってとこでしょうか。
 ちなみに野球場でなければ話はぐっと変わってきまして、たとえば2002年W杯サッカーの決勝戦会場である横浜国際総合競技場の建築面積は約67,000平方メートルなので、ショールームが2個入ります。東京ドームは1.43個。グラウンドなら5.15個入りますな。ああ、なんだかこれは広そうだ。でも体積や容積の単位にはならないか〜。

 こんなふうに見ていくと「おおお広い!」と思える共通認識がいかにして成り立つのか…てな話になるのだけれど、それだとくだらなく無駄な雑学を増やすここの方針に合わないマジな話になってしまうので、また別の機会にでも。


 余談として(ってこのページ自体が余談以外のなにものでもないのだが)「東京ドーム1杯は霞ヶ関ビル何杯に相当するか」も書いておこうと思って気がつきました。霞ヶ関ビル1杯分の体積に、かなり大きなばらつきがあるようです。検索かけて「〜立方メートル(霞ヶ関ビル…杯分に相当)」てな部分から計算したら、30万〜53万立方メートルの間になりました。って範囲がいくらなんでも大きすぎます。
  てなわけで、霞ヶ関ビル問題はまたいずれということに。
 

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