仕事を終えて帰宅しようと、エレベータで降りたら、途中階で乗ってきた人がいた。 背広姿の普通の中年サラリーマンっぽいおじさん。やはり帰路についたところなのだろう。手に持った夕刊にちらちらと目をやっている。 エレベータが1階に着いてドアが開き、歩き出した時、ふとおじさんが見ている夕刊の1面の見出し「松岡農相 自殺図る/心肺停止状態」が見えた。 いったい何が起こったんだろう、と内心驚きながら出口に向かって歩き出した時、 「これ……どうしたんですかねえ」 おじさんが不意に話しかけてきた。 1面の見出しを私に見せようとしているらしい。 「え、あれ、なんで? どうしちゃったんでしょう?」と、素直に見出しの感想を言ってみる。 「いやー、びっくりしました」 「ええ、ほんとに」 そんな感じの会話を交わしつつビルの外に出て、おじさんは雑踏に消えて行った。
えーと。 なんだこの一連のできごとは?
ふつう、エレベータに乗り合わせた他人同士はあまり互いに関心を持っていないようなふりをすると思う。狭い空間内で可能な限り距離をおいて、階数表示など凝視して。 儀礼的無関心の領域を越えてまで、思わず共有したくなってしまったおじさん。 それほどに驚いたんだろうなー。
今日の晩ごはん。 ゆで鶏サラダ菜添え、オクラのスープ、ひじきとコンニャクと人参の炒め煮、ダイコンのサラダ。 | |